そして実食は、幼いころから食彩品館.jpの購入してくる食品を、食彩品館.jp自らの解説付で食べてきた愛娘(23歳)と私でドライエイジングビーフとドライエイジングポークをシェアして食します。
ちなみに娘は美食家でもなんでもないのですが、食彩品館.jpとほぼ同程度の食経験を持っています。とはいえ、和牛香は知っていても熟成香を感じる程のレベルではありません。
まずはドライエイジングビーフです。
はっきりと「熟成香」と「熟成によって生成されたであろう旨味成分」を感じます。
なるほど。これが熟成香かとしっかりと確認できました。肉にはまったく興味が無い食彩品館.jpの家人も「良い香りがする」と認めました。
娘の感想は「熟成香かどうかはわからないけど(普通の黒毛和牛と比較して)旨味の違いと香りが良いことはわかる」。そして「とっても美味しい」。
ドライエイジングポークに関しても娘の意見は同様でした。
私の感想としては、ポークの方が熟成による効果(旨味成分の凝縮)があるように思うのですが、それは和牛香に似たものがポークにはなく、いきなり熟成香を感じることによる驚きが理由なのかなあとか、自分の脳下垂体に確認している途中です(笑)。
・味は舌で味わい脳が判断するという持論
ちなみに肉のやわらかさですが、「加熱による脂分の溶けだしによる柔らかさ」ではなく、肉質が柔らかく変化しているということも実感できます。
今まで「熟成肉」として販売されていた牛肉とはまったく違うことがわかります。
持論の「熟成香を感じる能力」なんてなくともはっきりとわかる香りです。
「おそれいりました」というしかありませんね。ホント。
まず、最初に感謝したいのは「さの萬」社に対して。
このような美味しい肉を提供していただいたことに対する感謝。
そして、次に、熟成肉の販売に取り組んでいるスーパーマーケット各社。“熟成肉”として本格的なものかどうかは議論がわかれるところですが、各社が販売してくれなければ、「さの萬」社の熟成肉には たどり着けませんでした。
ありがとうございました。
脂肪交雑の多い和牛肉の脂に対して食傷ぎみになっていましたが、これで食肉に対する興味がモリモリと復活。
↑ 保冷バックが350円。富士山の画像付の保冷材の他に氷のサービスもありました。感謝。
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◆さの萬社のドライエイジングについて覚書
(ドライエイジングビーフ手帳その他より抜粋追記)
1. ドライエイジングビーフの意味
①正確には“ドライエイジ・ド・ビーフ”とすべきだが、初めにひろまった言葉が「ドライエイジングビーフ」だったので、後者の名称を使用。
②熟成技術を用いてよりおいしくなる付加価値をつけた牛肉。
③腐敗させずに熟成させるには設備と技術が必要
2. ドライエイジング技術の歴史
① 水分が少なく脂肪交雑(サシ)の多い和牛に向く「“枯らし”“吊るし”という古来からの日本の熟成技法」。腐敗ではなく、熟成効果により柔らかさとフレーバー感を出すことができる。※“腐敗前の牛肉は旨い”説はこの「“枯らし”“吊るし”技術」に対する長期保存管理手法の誤解から生まれたと思われる
②次に肉を真空パックに詰めて水分を飛ばさずに熟成させる「ウェットエイジング」が主流に。衛生的な問題は少ないが、熟成効果としての期待感は少ない。
③現在では以下の熟成技術があります
・塊肉のまま長期間乾燥した状態で熟成させる「ヨーロピアンスタイルのドライエイジングビーフ」。独特のフレーバー感と柔らかさ。
・骨付き肉の状態のまま熟成庫で強い風を当てながら微生物の効果で熟成させる「ニューヨークスタイルのドライエイジングビーフ」。特有のフレーバー(熟成香)と柔らかさが特徴。
・ウェットエイジングとニューヨークスタイルを組み合わせたエイジング技術。※さの萬社はこの方法については推奨できないとしています。
3.ニューヨークスタイルのドライエイジングビーフ(さの萬社実践推奨)の特徴。
※以下“NYDAB”と略。
①やわらかさ(テンダネス)
・和牛は加熱により脂肪(サシ)が溶けることにより柔らかくなるが、NYDABは牛肉のたんぱく質を分解する酵素の働きを強くする効果があり、筋繊維がもろくなり肉質を柔らかくする
②香・風味(フレーバー)
・精度の高いNYDABにより、ナッツのような甘い香気を感じることができる
③旨味(テイステイ)
・酵素によるたんぱく質分解でアミノ酸を生成。水分(自由水)をとることにより旨味成分が熟成される
④本来の水分(ジューシー)
・和牛を加熱した時のような脂肪交雑の脂ではなく、肉の中に残った本来の肉水分の味を堪能できる。
4. ドライエイジングビーフ技術の注意点
①基本
・温度管理(1℃~2℃)
・湿度管理(70~80%)
・強い風を当てて熟成
②経験
・マニュアル通りに実施していもNYDABは成功しないことがある
③使用する牛個体が長期の熟成に耐えられるかの判断
・個体に対する見極め
④NYDAB技術の肝「強い風を当てて水分活性を下げ、微生物効果を引き出す」
・食品に含まれる自由水と結合水のうち、強い風を当てることで肉の水分活性を下げる(自由水を減らす)
・強い風を当てると肉の中に含まれる自由水が表面に移動し、その部分に熟成に必要な微生物が付着し繁殖。
・自由水が外に出ることにより、肉内部にはたんぱくその他が凝縮される。
・肉内部には結合水が残るため、調理時に感じるジューシーさは残すことができる。
・熟成が進行すると肉の中から出てくる自由水が減少し、水分が減ることによって表面に付着した菌が徐々に死滅する。これを見極めた頃合いで「熟成期間完了」となる。
※自由水は肉の内部を自由に移動できて微生物も繁殖しやすいが、結合水はたんぱく質と強く結び付いていて微生物は繁殖しにくい。
⑤上記NYDAB技術に対する“ウェットエイジングとニューヨークスタイルを組み合わせたエイジング技術”の欠点。(注:さの萬社の意見)
・真空パックで輸入される牛肉は到着後のドライエイジングに適さない。
・真空パック時に熟成に必要な酵素が抜けてしまうおそれがある。
・真空パックで輸入される牛肉は日本到着までに熟成(NYDABとき異なる“自然熟成”)が終了し、その後にNYDAB技術を用いても追熟熟成は望めない
・真空パックになっているものは「現地(生産地)でドライエイジングしたものかどうか」の確認が必要。
5. ドライエイジングビーフの美味しさの要は熟成庫内の管理にある
①正しい技術によって熟成された牛肉は、微生物が酵素を生成し、その酵素がたんぱく質を分解しアミノ酸を生成し、独特の熟成香(フレーバー)を生む。
有用微生物の生成と不要な雑菌の管理等、熟成庫内の良い“菌環境”作りが肝要。
・冷蔵庫に吊るしておくだけではダメ
②熟成期間
・アメリカでは21日~28日が標準熟成期間
・日本では米国との気象差や牛肉個体の質、菌環境により、40日~60日の熟成が必要
・求める肉質・肉味により、熟成期間は変わる
6. ドライエイジング技術に向く肉の条件
①水分の多い赤身系の牛肉
・ホルスタイン、短角和種、褐毛和種の赤身肉
・脂分の多い等級の高い黒毛和種は向かないがA5クラスの熟成に成功している事例もある。
・黒毛和牛の場合はA3以下のモモ肉等の赤身を使用
・個体ごとに長期熟成が可能かどうかを見極める
7. ドライエイジングビーフに対する誤解
①生菌数に対する誤解
・トリミング後の一般生菌数は熟成前の生肉より少なくなることがわかっている。
・熟成後は自由水が減少するため生菌数が減少していることがわかった。事例としては、加工4日目の牛肉の一般生菌数10×3乗⇒NYDAB技術で45日熟成後に10×2乗に減少
②店頭のショーケースでの熟成についての誤解
・店頭ショーケースでは生肉に強風を当てることができないため熟成することが大変困難。
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と、いうようなさの萬社及びドライエイジングビーフ協会の主張を頭に入れて、もう一度、食彩品館.jpの熟成肉に対する持論についての記事を読み返していただきたい。
・2015/05/28熟成肉の表現と期待することについて私見
自画自賛ですが、大変良い記事だと思っています(笑)。この記事の持論については さの萬社のドライエイジングビーフ実食後も変わっていません。
本物かどうかは国の基準がない以上、消費者自らが決定すべきだと思っています。
「熟成していない食肉はないというのが食彩品館.jpの結論です」。
美味しいかどうかは別の問題です。
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●さの萬
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